双門の滝【奈良県 吉野郡 天川村 北角】
訪れるなら滝壺までと思い、
ここ1~2年の目標の滝でした。
遠望地点から先へ、
迷わずに足を進められるだけの
準備ができ、心構えがついた時。
それが双門の滝壺への
挑戦権を得た時なのではないでしょうか。
参照させていただいた
BALさんとパンダさんのページです。
・滝人Collection:双門の滝
・紀伊半島の滝:双門大滝
滝の記録
訪問日 2015年9月20日
活動の形態:上級滝巡り(単独)/レンタ
装備:7mm30m×1, アプシュー, 沢タビ(未使用)
感動度:限りなく~異次元
①腹ごしらえ
起床は近くの道の駅。
そこから14kmくらい北へ戻って、
コンビニでカツ丼を食べて、腹ごしらえ。
長い道のりで
早く動き始めたいけれど、
間違いなくこのカツ丼は大事。
たくさん調達して川迫川へ進む。
熊渡のゲートのところは
車がいっぱいでもうちょっと遅かったら
止められなかったかもしれません。
ここの駐車は1つの核心です。
②林道と白川
橋を渡ったら登山届を提出して、
そのまま林道歩き。
同じタイミングで登る方がお一人。
林道はかつて車で進めたそうです。
その後左へ降りて行き白川八丁へ。
弥山川の伏流帯であり、
この日は渡渉なしでした。
③ガマ→右岸→左岸→大岩
ガマ滝はかろうじて流れている程度。
少し休憩してまた先に進む。
ルートは新旧が一部
入り乱れている感もあり、少し厄介。
最初は右岸沿い、途中で対岸に渡って
左岸沿いとなるがそのまま終盤で
大岩越えへとなだれこむ。
特別困難な登りではないも、
通常の滝めぐりとして考えると
やはり危険のある箇所でしょう。
④一の滝&二の滝→梯子
そのまま登山道を進めば一の滝&二の滝。
全く登れると思いませんでしたが、
調べたら登攀可能のようで、
弥山川ゴルジュの遡行は
ここから始まるそうです。。
またしばしの休憩。
そしてこれからが梯子登りですが、
思っていたよりも梯子は連続してませんでした。
やや不明瞭な登山道の一部
(集中するときはわりと集中)に梯子がある
といった感じで、
怖いと評判の開けた岩場も、
もっと怖いはずだと思って
先に進んでたらもう出てこなかったので、
初めて「あの場所だったのか」
とわかった感じで
実際は「やや開けてるな」
ぐらいにしか感じなかったです。
しかしここらへんは今年沢登りを
多少やってたからだと思いますし、
滑ったら死んでしまうので
ふざけたりしてはいけないところです。
⑤出会い
梯子を少し降りて開けた場所が見えたら
そこはもう双門の滝が遠望できる
テラスが近い所。
ここ1~2年目標であった双門の滝が
ついに眼前の風景の中に。
感動的な出会いでした。
左岸に見える圧倒的な大岩壁「仙人嵓」
遙か眼下に弥山川ゴルジュ、
そして双門の大滝。
それらが合わさった雄大さと厳かさは、
あの那智や華厳、不動七重に近いような
「威圧感」のようなものをビシビシ感じる、
平たく言えば「凄い滝」であり、
ようやくこの目で見れたことに感動しました。
しばし滝を見ながら休憩しました。
(※ 注 このテラスから落ちたら助からないので注意です。)
⑥進み、下る
今回の本番はここからで滝壺を目指します。
登山道をさらに上へ→橋までいく
→橋の下のガレ場を下降
という流れとなります。
双門の滝壺に躊躇なく
向かえるような心構えを
つけるつもりで沢登りにも行ってきました。
(豆焼沢・水無川本谷・鳥屋待沢・小草平・絵馬小屋・竜喰谷・モロクボ・巳ノ戸・軍刀利・鷹ノ巣・大薙沢 etc…)
そうして迎えたガレ場が、
どのようであったか。
詳しくは後述します。
とにかく頑張った結果、
滝を見下ろせる近くまで接近。
最後は懸垂下降で降りたらそこは滝壺です。
⑦ゾクゾク感
ついに来てしまった双門の滝壺。
それは夢を現実に変えた瞬間でもあり、
また次の夢が始った瞬間でもある。
秘境中の秘境の滝の壺は
限りなく深い青緑色をしていて、
散らばっている1つ1つの岩の形状
すら洗練された神々しさ。
止まらないゾクゾク感。
日本に生を受けたいったい何人が
この場所で滝を仰げるのだろうか。
何気ない足の動き、
シャッターを切る動作
この場で体を動かせること、
そして息を吸えること、そんな
当たり前のことがただこの上なく幸せでした。
滝壺から見上げる
双門大滝の落差は45mくらい。
滝下から見上げた際に、
日本の滝を代表する規模感ではありません。
けれどもこの滝には
僕が十代の頃から
秘境の滝に対して抱いていた
1つの心象風景が存在していて、
何か深い意味を感じました。
人は満足してしまった時、
エネルギーがだだ漏れしてしまう。
ということを今年学びました。
満足をしすぎず、
弥山の素晴らしい大自然に感謝をし、
この滝壺を後にしました。
⑧後始末
この滝に至る下降ルートは、
あの岩屋谷雄滝よりも険悪です。
そして岩々が脆すぎるので、
一回誰かが訪れただけで、
地形が変わることが予想されます。
滝側の崖からガレ場までは
樹林帯のトラバースがあります。
そこが【ステージ4】で、
その上の【ステージ3】へは、
ルート途中の大岩登りよりも
一段階ハードな岩登りが待っています。
(ステージ3と4)
で、登り返しの悪夢は
【ステージ3】から【ステージ2】段階。
結構下まで実は残置のぶっとい
ワイヤーが伸びていました。
(下降の時は使いませんでしたが。)
しかしこの
ぶっといワイヤーがくせものです。
ワイヤーが切れている地点に対して、
2015年9月現時点で登り返しの際に
そこに取り付くのが、
非常に困難となっています。
たぶん設置後に
地形が崩れたんだと思いますが、
僕は行きにこのぶっといワイヤーを
左に見ながら相当傾斜がきついところを、
ロープを何回か出しておりました。
最後の懸垂下降のために、
長いロープを残置するわけにはいかず、
全部ロープを抜いて下にいきました。
ロープを抜いたのも、
隣にワイヤーがあるし、
同じルートの登り返しが出来なかった時は、
これに取り付けばいけるなと思ったからです。
しかし実際は
僕自身が降りた崖が脆すぎて、
登り返しが不可能でした。
登り返そうともがいたら
さっき降りてきたその岩場、
その3~4割が原形を留めないほど崩れて
呆然とします。
ガレ場の遥か上を見上げての不安。
これ、生きて帰れるのかなと。
⑨生きて帰る
上方向に向かって一番左側の谷は
かなり厳しい様相で断念。
そのエリアの一番右側も
きつい傾斜の岩盤で無理。
結局、そのワイヤーしか
あてはなくなりました。
このワイヤーに対し向かって左から
トラバース気味に魂のアプローチをしました。
足場は大変に悪く、
絶対落ちれない中での横移動。
これでワイヤーが固定されてなくて
動いたら終わりでしたが、
なんとか掴んであとはパワークライム。
ワイヤー沿いで一箇所右方向へ
お助け紐を出しての渋いトラバース。
(【ステージ2】内)
さらに上からは岩の切れ目に見える場所
に全力で這い上がり後は橋まで着実な詰め。
【ステージ1】
以前はこのエリアから
下降時にロープを残置せずとも
登り返すことができたのかもしれませんが、
クライミング能力が高い人
でないと今は困難だと思います。
つまり下降時に、
ステージ2からステージ3に降りる際は
ロープを残置しなければならない
ということです。
どこまでステージ2で
どこからステージ3というのは、
説明不可能なので
現地で見極めが必要です。
這い上がって再び遠望地点まで。
更に鉄ハシゴの下り。
大きな滝壺が見える所で接近すると
三の滝の滝壺にいけます。
色が綺麗で見応えがあり、
訪瀑の価値があります。
さらに、大岩-ガマ滝間の
双竜の滝は旧ルート沿いからの
接近になります。
⑩終えて
夕暮れの白川八丁は
自分が歩く以外は無音の世界でした。
素晴らしいフィールドで
上質な課題とがっぷりと組みあい、
数十分間、真の深みに触れられました。
今年も実働はあと2ヶ月程度。
いい形で締めくくっていきたいです。
【コースタイム】
<道の駅黒滝で起床
→北へ十数キロ戻ってコンビニでカツ丼>
7:44 熊渡
8:10 林道分岐
8:14 白川八丁
8:29 ガマ滝
<休憩7~8分?>
9:10 大岩登り
9:20 一の滝&二の滝
<休憩 約8分>
10:25 双門の遠望着
10:48 遠望地点発
11:10 橋到着
<装備強化>
11:18 橋発
<苦戦>
12:19 崖の上
12:28 滝壺 <遠望地点発から100分>
13:08 滝壺発
13:15 崖の上発
<超苦戦&下山>
14:54 遠望地点
15:00 遠望地点発
15:45 三の滝滝壺
15:58 三の滝発
16:22 一の滝&二の滝
<休憩>
16:46 双竜の滝
18:06 熊渡 駐車スペース
<行き 熊渡→遠望161分 遠望→滝壺 100分>
<帰り 滝壺→遠望106分 遠望→熊渡 186分>
(ちょうど辺りは暗くなった)
アクセス
Step1 川迫川沿いの熊渡へ
Step2 登山道を進む
Step3 遠望地点まで3時間前後