宮之浦川 竜王滝と漏斗滝【鹿児島県 熊毛郡 屋久島町】
コメント
ひょんなことから始まった、
宮之浦川の下降計画。
もちろん、距離も長く滝も多い本谷ではないが、
安房川北沢右俣の遡行断念もあって、
それはついに決行に移されるのであった。
滝の記録
訪問日 2019年5月1~3日
活動の形態:3級上~4級下 (2人) / 車
装備:7.7mm×40m (2本), キャニオニア3, 撮影機材, テント, シュラフ
感動度:異次元(竜王滝)
①朝、寒さで起床
午後だけで雲水峡から
高塚小屋まで進めた1日目。
コースタイムはこんな感じだった。
13:33 雲水峡発
14:40 辻峠
15:10 トロッコ道
16:40 ウィルソン株
17:39 縄文杉
17:53 高塚小屋(テント場)
テントを畳む。
何かを食べて、体を温める。
滝ペーさんは10分ほどしか寝れなかった模様。
それで登山を継続するんだから体力おばけである。
ここから新高塚小屋までさらに高度を上げて行く。
この小屋の北面が僕らが下降する場所だ。
②谷を行く
T字峡に直接注ぐ谷と、
その左岸の尾根と2つの選択肢があったが、
ここは谷を選択。
藪尾根に美は求められない。
宮之浦川本流に描かれるような、
両岸の崖マークもなければ、
滝マークもない。
ただ、下流部はそれなりに等高線も狭まっており、
油断は決してできない。
そんなイメージだ。
記録のない谷だが、
それは宮之浦川を目指す上級パーティは、
最大の難関、竜王滝を越えられたあと、
本谷を継続遡行しない理由はないからと考えられる。
③小高塚沢の滝
最初はゆるい谷。
途中で多段 15m滝が来るが、
左岸から簡単に巻ける。
少し流れがいい感じだった。
そうして少しずつ、水量が増えて行くと、
多段で大きそうな滝の上にたどり着いた。
ここの懸垂下降の支点は左岸の木。
αで一枚、姿を捉える。
なかなかの地形だ。
そしてその下。
また滝。段瀑で大きい。
ここは支点がなかったので、
右岸側にハーケン2枚+スリングで支点を構築。
40mロープを連結して、
下降に入る。
④危機
滝ペーさんが先に降りるが、
何だが、水流もろ浴びルートに直撃して行ってしまった。
(ロープがそっちに行ってしまったとのこと。)
2段降りた中間地にて待っていたので、
僕はもろ浴びルートを避けて、そこまで到達。
下は10m級の完全な直瀑だ。
さて、ここでピッチを切るかどうか。
長さ的には全然足りる。
しかし、回収できるか。
切り直すと、再び支点工作とロープ引きと、
作業時間が2倍に伸びる。
降りてしまいたいところ。
この場所でロープを引いてみた。
そしたら、動いた。
下降に入る。
一部空中懸垂だが、
僕らはバックアップ付きの懸垂下降をマスターしている。
たとえ途中で両手を離したとしても、問題はない。
そうして滝下へ。
ロープを引いてみる。
うご、、、かない!!!!!
色々と角度を変えてみる。
伸びるが、反動で元どおり。
ピクリともしない。
⑤投げる
この未知の谷の下にはまだ、滝があるだろう。
この、険悪な、10m直瀑を見れば、
登り返しが絶望的であることは誰もがわかる。
頭の中では理論上の、
登り返し技術はあるが、
10m分やる間に力尽きてしまうだろう。
正直、焦った。
しかし、今回のような非常事態で良くないのは、
怒り、我を失い、場の雰囲気を乱すことだろう。
むしろ、「どうか動いてください。
ヒントをください。生きて帰らせてください。」
と、祈る、全託する姿勢が重要となってくる。
そのためには、日常的な心の安定、
些細なことで、感情を乱さない習慣が肝要である。
まずはロープの交差を解く。
そして、直線上に仕向ける。
そして上に上げる。
何度も上げる。
信じて引っ張る。
摩擦で岩に擦りついていた、オレンジの紐が動いた。
こうして、3段30m滝を下降。
少し下流から振り返る。
⑥スラブ大滝でのこと
続きは、25mの右岸がスラブの大滝。
この滝は流木に支点をとり、
40m2本を連結したように思う。
下を向いて左側の水流に飲み込まれれずに、
右岸のスラブ帯を降りていくことは実に難しい。
滝ペーさんは途中で、
水流に飲み込まれてしまった。。。
回収作業へ。オレンジが順調に動いて行く。
しかし、何故か、
途中で止まった。。。
また止まってしまうのか。
ここは僕がスラブを登り返して、
高度を上げる。
そこからもう一本の灰色の絡まりを取ったり、
その場所からオレンジを引っ張ってみる。
何回か踏ん張ったら事態は打開へ。
しかし、ロープが動き始めたことで、
帰還に当たって小さな滝壺にドボンせざるを得なかった笑。
技術的なことを考えると、
1本目は途中でピッチを切り、
2本目は流木に直接ではなく、
捨てスリングをかました方が良かったんだろう。
そして登り返しは絶対できるようにしておくこと。
⑦漏斗でのひと時
その先は大きな滝はなく、
8mCSも右岸から巻いたら、
見えてきた。
エメラルドグリーンの滝壺が!!!!!
宮之浦川 2段10m滝 通称 漏斗滝
漏斗のように岩盤が抉られている。
この滝は写真よりも、実際に見た方が、
抉られている感じが実感できて、感動する。
しかも、その秘境感たるや、
僕が見た全滝の中でもトップクラスだ。
しかし、さっきの滝壺ドボンやらで、
カメラが水蒸気を含んでしまって、
漏斗滝の撮影は散々なものだった。
アイフォンで↓
当初案にもなっていた、
小高塚沢の左岸尾根の最後は、15m弱の崖。
そのため、この場所から
尾根にエスケープすることはできない。
⑧竜王の右岸巻き
少し下流に降りる。
すると、そこはもう、
竜王滝巻きおりへの唯一の道となっている。
ガリー状を詰め上がって行く。
途中多少傾斜が増したりするが、
それほど異常なものではない。
着実に地形を見極めれば、尾根に到達。
そして尾根を降りて行くのだが、
問題は、下降地点の見極めだ。
コル
目印は全くないが、
地形図がセットになったGPSアプリの使用は、
もはやマストだろう。
目星をつけたところから、降りて行くと、
竜王滝の右岸を形成するスラブが見えた。
ということは、もう降り続けて、
滝上に出ることはない、ながらも、
もう少し下流側に行かないとならない。
というような感じで調整。
⑨じりじりと攻める
そして基本的に、
様子を見ながら、絡まらないように、
40m一本ずつでの懸垂の連続。
着実に高度を落としていく。
最後に、竜王滝の滝壺を視認した高さは、
約25~30mだっただろうか。
ここにて2本連結で、下降へ。
竜王滝ほぼ真横の、
登れないルンゼの隣に降り立つことができた。
⑩宮之浦川 竜王滝
滝壺のエメラルド、完璧な岩壁と、
奥にのぞかせる上段と青空。
もっと、晴れ間など見せない、
暗く狭い滝だと思っていた。
水量も今日は豊富。
その御姿はまさに
「竜の王様」であった。
さて、時刻は15時15分である。
下降を続けて行くが、難所があるという。
⑪18m CS滝の巻き降り
素晴らしい谷。
この辺りは僕はまったくもうリサーチしていない。
滝ペーさん任せだ。
途中、滝ペーさんが傾斜の、
きついスラブをスタスタと降りていったが、
長い間フェルト靴の僕には、苦手なムーブで、
同ルートの追随ができず、
13分ほど時間をロスしてしまう。
その後、トラバースする箇所があったが、
そこは気合いで突破して、フィックスを張った。
フィックスを渡る滝ペーさん
あとはさらに左岸の高い高度の踏み跡を辿って、
最終的にロープ2本連結で沢床まで下降。
大きなチョックストーン滝と、
右岸の支流滝の間に降り立つ。
ここにて竜王滝下の最大の難所は終了。
⑫快適な夜
そして時間も17時といい感じであったので、
今日はチョックストーン滝前で宿とすることにする。
あとは明日の午前中に下山するだけだ。
18mCS滝
挟まったCSの大きさが異常
右岸支流 白糸の滝
ご飯の前に、
スラブを降りる練習をしてみて、
リラックスしながら遊ぶ笑。
足に力を入れる箇所と、
上半身の体のバランスが肝である気がした。
この場所は増水には耐えられないが、
本日夜の予報は晴れのはず。
2つの滝に挟まれた平安な場所にテント張り。
大自然と調和した、
ひたすらに快適な沢の夜を迎えた。
2日目 コースタイム
6:33 出発
9:55 小高塚沢 3段30m滝 下降中
10:13 ロープ回収成功
10:39 25m滝下
10:57 ロープ回収
11:17 漏斗滝
12:06 漏斗滝発
12:35 コル到着
14:40 高巻き終了(竜王滝着)
15:20 ごろまで撮影
16:07 FIXロープでトラバース
16:48 18mCS滝を撮影
17:10 幕営開始
⑬蚌岩と橋までの下降
朝。本日は下山のみだが、
まだ沢下降は続く。
白糸の滝を下から
第三巨岩と呼ばれる、
大岩の横には滝がかかっており、
ここは懸垂下降が必要。
蛤みたいな形の岩で、一見の価値がある。
その後は、大きな滝というのはなくなり、
宮之浦川を楽しみながら下降。
谷
テトリス岩
この上から微妙で降りれず回り込むことに。
左岸のスラブと滝
時に左岸の樹林帯も通った。
気持ちの良いところ
潜水橋!!!
⑭ずん長い林道と車
宮之浦川はここからの林道歩きが長い。
とても長い。
途中見えた空。
最後の橋!!!
ここは電波が通じて、
宮之浦から10分程度でタクシーが来てくれる。
2700円程度で、
雲水峡の車へと運んでいただいた。
3日目 コースタイム
7:21 出発
7:41 第三巨岩の下
8:16 テトリス岩の横
9:54 潜水橋
11:53 空が見えた場所
12:38 橋
12:40 行動終了, 下山届提出
⑮まとめ
本来の安房川北沢右俣計画は、
増水により、実行できなかったものの、
宮之浦川の降渓を完遂。
さらには、T字峡にて本流に合流する、
未知の「小高塚沢」の内容を、
明らかにできて良かったと思う。
今回のルートの総合グレードは、
オンサイト 4級下。
特に、小高塚沢の2本の滝のロープ回収と、
竜王滝の巻き降りのルーファイが核心部となり、
回収できなかった場合は遭難が確定する。
安房のために用意した、
ファイブテンのラバー
「キャニオニア3」であるが、
白系のスラブでは、問題なく使えるも、
茶色が混じると恐ろしく滑って危険だった。
しかし何より、
足自体のサイズは合っているのだが、
くるぶしのあたりの隙間が欧米サイズなのか大きく、
土や小石が頻繁に入ってくる。
靴紐タイプなので、
たまに、ほどけてしまうのも、
沢タビとの大きな違いだ。
キャニオニアと沢タビの実感
キャニオニア3は、
非常にカッコ良いというところは付け加えておきます笑
(小田汲川へ)