苗場南嶺 筍山 清津川 大栃沢の滝

活動記録

訪問日 2025年9月20日
活動の形態:2級下沢登り / レンタ / 単独
装備:ラバー足袋 / 7.9 × 40m × 1
感動度:まあまあ~けっこう (出合付近の渓相と筍山上部)
所在地:新潟県 南魚沼郡 湯沢町 三国

① 朝に舞う雨

こちらの方面に近づく機会を得たので、
記録の見当たらなかったこの谷の探索を決定。

当初アプローチ拠点と見立てたプリンスホテル近くのロープウェイ山麓駅付近は、駐車場としてプリンスホテルのものしか見当たらず、停めて良いか判断がつかぬまま結構な雨が降ってきたので、止むまでの時間稼ぎも兼ねて、清津川沿いのゲートまで車を移動させる。

すでに3台の車が止まっていたが、沢なのかは謎だった。

ゲートは巨大堰堤上の橋の手前にあるが、堰堤上では現在工事中であり、水力発電の環境維持のためのメンテが図られていた。

棒沢の釜段の滝が気になってはいたが、今回は訪問せず河原に降りる。

清津川本流はミルキーブルーな色合いで、側壁も見応えがある。

すぐに大栃沢の出合いとなる。

② 楽しい出合

左側に出合がある

2m滝で始まる

1.5m斜瀑に臨む

上から

この先の奥に2段5m滝

いい感じの雰囲気

上段前の角度が変わった感じも良い。

少し上のナメ

2段6m滝は次なる見所

こういう地形が続いていくのだろうか…

この滝を登ると小ゴルジュ帯は終了となる。
(入渓点 897m→標高 918mにて開ける)

③ 開けてから (920~1000m)

苔テーブル 50cmの流れ

青い水

デカい岩と流れ

1mの上に丸い岩

緩やかな流れ

4m滝と大岩 (ここは特徴的)

地形図と勝手なイメージからもっと樹林帯ではなく開けた沢とのイメージだったのだが、完全に樹林の谷で、かつ沢幅も狭く、圧迫感がある。

2条倒木の2.5m滝
(標高972m)

イヌヤマハッカ

赤い棘があるのはくまいちごか?
(標高989m)

釜が深く左壁からちょいぼる(8級)で越える

谷の中で時折、黄色い鳥が姿を見せたなと思ったら、僕の接近を確認してか、上流側に去っていく現象をなん度も確認した。

黄色い鳥といえば、代表格のキセキレイ。

なんでもこのあたりの標高はキセキレイの生息地として適しており、かつ川筋を用いた逃避行動としてもキセキレイとして可能性が高いと判断される。(道案内をしてくれていたわけではないようだ)

スケッチ

④1000~1200m

1028m付近で大きな支流と分かれる。この右岸支流は上部でスラブ地形になっており今回はパス。

ツガサルノコシカケ

2m滝 (壺あり) 1085m

見所に乏しく、なんとも言えない時間が流れる。

1100mを越え、谷のなんとなくの不快感は継続されていく。

狭い、ヌメる、倒木多い、暗い といった感じで、こうした場所で一人で沢登りをしているとネガティブな考え方に襲われ易いことに気づいた。1160m地点ではまだ中盤なのに両岸からのボサが自分にかかりそうな箇所も出現。

そんな中、少しいい感じのナメが現れたので、休憩。(若干場を掃除した)

この滑らかなる流れは悪くないと思う。

苔に満ちた小沢を進んでいく。

2連2.5m

きのこ

⑤ 苔ランドからの収束

この沢ではデカめに相当する4m滝

苔ランドを観察

この辺のびっちりとした苔はかなりのもので、苔マニアにはお勧めできるかもしれない。

地味な2段5m滝

スライド型の2m滝 (1230m)

滝はここで収束。

印象的な木があり、これが沢名の大栃か?と思うもおそらくはスギ。

相変わらずの滑りで一回派手に転んだ。

⑥ 登山道的と激藪

標高1300mに差し掛かると急に水が枯れて、まるで登山道のような渓相に変わる。

谷筋が狭く、緩く、平たい岩中心で構成されているので、本当に登山道のようだ。

この辺りでは、3種類以上の歌鳥のコーラスを体感 (キクイタダキ+ヤマガラ+?)

キクイタダキのスケッチ

右から越えたスラブ (10級)

すでに標高差100m以上登山道的な道が継続。

良い岩があった (1411m)

振り返ると上空を猛烈な風が横切る
(1480m地点)

標高1540mを越えるとちょっとした藪があり、1560mから激藪となった。

激藪の最中わずかに左に逃げて5m級のクラック登攀がこの日の核心。

7~8級のムーブで上り切り、上へ繋げるも、薮は止まることがない。大栃沢は記録も見当たらないほど人が通ることがほぼない沢だ。

横着してアイウェアを装着しないでいたが、流石に危ないだろうと1600m付近で救急バッグを取り出して装着。1000円弱で買ったもので視界は暗くなったが、確かに安心感は爆増。曇りでさらに視界は悪くなる。そんな中、低い位置が見えずに左足を倒木の尖った出っ張りに強打してしまい、ここは強めの打撲となった。

もっといいルーファイがあったかもしれないが終盤はひたすらに密藪を直登。1680m付近ではマツ?を確認、1740mのコルまで必死に這い上がった…

⑦ ジャズと下山

コルに立つとどこかからか、軽快な音楽が聞こえてきて、不思議な気分。

自分のスマホではないし、これは商業施設が山の上にあるのか?それとも幻聴が聞こえているのか?全く分からず不安な気分。地形図上道があるっぽい場所まで30m弱降っても、道に至らないが、音楽はより濃くなっていく。さらに30m下げたところで林道に出た。

ソニークリスというアメリカのジャズ・サクソフォーン奏者の1956年の「Wailin’ With Joe (ジョーと一緒にワイリンする)」であることが判明。

筍山には電波塔があること、観光客が多いことから、熊を対象とした鳥獣忌避的な目的でジャズを流し続けているものだと判断した。不思議な音風景に包まれる。

何かの施設

スキー場の横

この辺り、標高も高くなってきているし、小雨も風も強くて、ハードシェルを着てなければ耐えられないほどの寒さだった。体感10度以下?

車が上がるのはシビアめな坂

緩やかな芝生を経て

この辺の下山路は普段の滝や沢活動を大きく異なっていて、ユニークな感じでとても心に残った。途中から雨も上がっており、冷えも解消。

基本的にはずっと道があるが一部ショートカットもして下の林道へ。ここからは行きに車で通った道をたどって清津川の橋まで行かなければならない。

ミゾソバ(コンペイトウグサ)は群生が見られた。

越後湯沢付近で車を返却し、帰路についた。

⑧ まとめ

大栃沢は少し記録がないところの中で、安全を攻めすぎてしまったかもしれない。

想像と違った地味で暗く水量も急減する沢構造には原因があったと思われる。

まず、標高線の偏り。筍山は北西方面のみ標高線がキツくなっており、この辺りの斜度がきついと純粋に保水されにくく、また沢を通して、まーるい尾根筋が接していることが多く支流の谷面積が意外と少ないことが判明した。

同じように雨が降っても谷が少なければ、そのエリアですぐに水として出ずに伏流水となる可能性が高く、その沢の水量としては寄与しにくい。また地層的にも苗場周辺は新第三紀 火山岩・火砕流堆積物を含んでおり、岩盤のすぐ下に透水層のローム層が上部で堆積していたのなら、詰めまで430mもあるのに突然水枯れした理由も説明が付いてくる。

これだけ実際の土地が、想像を何段階も超えてきたことで、逆に地形図や地層などの疑問が湧き、理解が深まったという点では大栃沢は面白い場所であったとも言えるのかもしれない。

沢だけではほぼ難所なく1級だが、詰めの藪だけで1.5グレードぐらい上がり、全体的なコース設計と記録がみあたらなかったとのことで、2級下としている。