訪問日 2025年5月3日
活動の形態:中級滝めぐり+α / 車 / 3名
装備:フェルト足袋 / 8.0 mm × 30m × 2
感動度:かなり (九十三四郎滝)
所在地:埼玉県 秩父市 中津川
① 計画
ゴールデンウィーク後半、当初は5月2〜3日での沢登り計画を立てていたが、2日は強い雨に見舞われた。増水の懸念が拭えない中、翌3日の予定も慎重な判断が必要となった。
安全を最優先に、当初候補としていた沢は見送り。3日にはKの参戦も決まり、計画を再構築。選定したのは、奥秩父・中津川エリアの鎌倉沢、ムジナ沢。滝めぐりと軽めの沢登りを組み合わせた、柔軟なプランとした。
② 中津川へ
埼玉県側の奥秩父に位置するこの一帯は、想像以上にアクセスが遠く、奥へ奥へと分け入っていく実感が強い。
Kは、今年の個人的な目標として、小川山・西股沢流域の巨岩 妹岩の課題を突破することを掲げていた。
駐車地点に到着し、動き出すと、もう一組、男女ペアのパーティが入渓準備をしており、挨拶を交わす。斜面を下り入渓する。
③ 静けさの中
最初はやや薄暗い森の中。

すぐにナメ状の8m滝が現れる。撮影をしている間に、先行ペアには先を譲った。

1/10秒撮影
この滝上からは徐々に日も当たりはじめ、柔らかな光に包まれた快適な沢歩きが始まる。


難所はないものの、ちょっとした小滝でも最適な足置き、ライン取りといった技術の見直しに繋がる。


2m滝

中央に走るクラックをボルダー的に登れるという先人の記録があり、我々もそこを辿った。

緑がかった河床と相まって、実に癒される雰囲気だった。
途中、休憩がてらKが面白そうな岩を見つけ出し、ミニ課題を設定。「苔マントル 7級」。

地ジャンスタートで、僕もなんとかギリギリ完登。スタートは写真右端の一番低い部分から。
こうしたゆるい沢の中にも、遊びを持ち込めるのは面白いところだ。
④ 法印の滝へ
癒しの沢地形が続き、やがて前衛滝に至る。

落差6mほど、滝前の木々が印象的で、明るく開けた気持ちの良い場所。右岸にはしっかりした遊歩道も整備されており、一般ハイカーも近づけるエリアとなっている。
そして、法印の滝へ。

非常に開放的な空間で、滝前は広く、滝の形も美しい。

中央には穴がいくつか空いており、不思議な造形を見せている。惜しむらくは、ヤマザクラが咲いたまま倒れてしまっていたこと。花ごと横たわった姿は儚いものだった。
左から中段まで登ってみようと試みたが、途中から悪くなってきたため断念。残置のハーケンなどが必要な状況と判断し、無理をしない判断を取った。

この日は前日の雨で水量豊富で、この滝のポテンシャルが遺憾なく発揮されていた。
ここでコンビニ蕎麦を広げての昼食タイム。陽光に包まれ、癒される時間が流れた。
ちなみに、滝名についてはやや混乱があり、滝前の看板では「法印の滝」となっているものの、スタート地点の標識には「方円の滝」と表記されていた。地域内でも表記に揺らぎがあるようだ。
⑤ 鎌倉沢の森
今回はもう少し上部まで進む案もあったが、沢の構成上、良い区切りと感じたためここで引き返すこととした。
帰路は整備された登山道を通る。道中の木々には、体験の森 鎌倉沢の名にふさわしく、手作りの樹木の種類の紹介が掲示されており、理解が促進された。

このエリアでは沢ごとに「○○の森」というテーマが与えられており、たとえば大若沢は「学習の森」、大山沢は「原生の森」となっている。

⑥ ムジナ沢へ
車の前で少し休憩をとったのち、せっかく奥秩父の奥地まで来たのだからと、歩いてアクセス可能なムジナ沢の九十三四郎滝を見に行くことにした。
途中、この土地のオーナーの方と出会い、行き先を問われる。目的を伝えると、研鑽を積んだものに見えるとのことで、通過することができた。
右岸に広場と建物がある場所の奥から入渓。小ゴルジュを抜けると、思いがけず穏やかで静謐な森が広がっていた。改めて、奥秩父の自然の深さと豊かさを実感する。

そして現れたのは立派な無名滝。

落差は15m弱あり、流芯も力強く、見ごたえのある一本だった。
滝のすぐ前を水道管や人工のワイヤーが横切っているのは残念。

ただし、滝右岸の岩峰の迫力はすさまじく、岩壁の高いところには巨大な蜂の巣も確認された。
一般的に滝屋は左岸の泥斜面を巻くのが一般的なようだが、ここは右の岩棚を直登したい。
必要に応じて、上部でワイヤーを補助的に使うこともできる。

6mほどのナメ滝の上には、谷の中央に丸々とした岩が鎮座。

ここを沢沿いに進むと…

ナメの先に4~5mのCS滝

CSをかわす
その先で少しスリッピーな滝を越えるところで、本日のぶん太に出会った。

少し小さく赤みを帯びている個体だった。
4mトイ状滝が見えると、いよいよ九十三四郎滝は目前。

振り返ると沢筋の大木が趣を与えている空間

左岸から枝沢が入り、段瀑が落ちている。

滝本体はその奥の洞門から水が放出される特異な構造を持つ滝。飛沫がなかなかすごく、岩間から接近していった。

水量豊富なこの日の九十三四郎滝は、35m前後の落差を堂々と見せ、Kも思わず喜びを見せるほどだった。

秘密基地感もあり、程よく奥地にありながらアトラクションをこなして30-40分で接近も可能。

まさに中級滝巡りの醍醐味を凝縮した一本。

帰路は沢下降。Kが適切なルーファイで道を選び、途中の15m滝ではあえて懸垂下降を実施。ロープワークの復習を兼ね、バックアップ付きの懸垂で下った。

⑦ 逆巻の滝
車に戻ったのち、まだ時間があるため、「小神流川(神流川の支流)」にある逆巻の滝へ単独で訪問。Kともぐは装備解除と休憩中。
本流左岸には巨大な岩洞ルーフがあり、帰路にリード課題が設定されている様子も確認。

渡渉を経て進むと…

せり出した岩の奥で斜瀑として流れ込む風景が美しい。

真正面に回り込むと、岩峰と滝が組み合わさった風景が広がる。滝壺ではエディ(反転流)が発生していた。

この滝を最後に、本日の全行程を終了。
⑧ まとめ
いったん帰宅してしまえば、翌日公共交通機関で再出発するエネルギーは非常に大きい。翌日は休養とした。
ゆる沢、中級滝巡りにはなったが、豊かな自然は楽しい。様々な経験をしてパーティとして引き出しやしなやかさを蓄えていきたい。
