中ノ岐川 滝沢、花降沢の滝【新潟県 魚沼市 】
滝の記録
訪問日 2023年7月29~30日
活動の形態:3級沢登り (3名)/ 車2台
装備:8mm×30(2本), 泊装備, ミラーレス一眼(広角)+三脚, ラバー足袋
感動度:かなり
① 夏が始まった!
GWの宮崎遠征で同行したポムチムと、遡行を模索していた中ノ岐川滝沢。
弘田さん、moto.pさんの遡行記録から遥か昔から大いに興味を持ち続けていた。
深夜に王子駅にて舞氏と合流して新潟に向かう。
小出インター側の道の駅で朝を迎えた。
中ノ岐川に向かうルートは、新潟県道50号小出奥只見線(奥只見シルバーライン)を経る。
② 滝沢の渓相
釜ナメ滝
逆くの字 5m滝
30m級の大滝
見事な滝で、感動した…
③ 滝との接点
左岸からブッシュを登る。
この後上部は滝に入り直登する。(III 高度感あり)
連瀑を経ていたるこの滝
moto.pさんの半ズボン登攀写真が目に焼き付いていた。
僕らは右岸の岩棚をノーロープで直登し、途中からブッシュを経て滝上に出た。
明るい場所で14m滝
この滝は結果的に舞氏がノーロープで突破。
中段に行く際に外傾箇所を乗り込んでいくのが緊張するムーブで、上部ではクレムハイスト確保の元、ガストン、足の置き換え、ハイステップを要した(IV)。
こんなイメージ
ロープを出すことが望ましい。
笑顔が止まらない
④ 明るい谷
4段35m級の滝
小滝を登り…
末広がりが見事な中枢部
二人は滝を越えるルート取りに、意味を見出すようになっていた。
ポムチム氏が真ん中からジグザグにロープ出して登攀。
難しいムーブはないが、ぬめりに気をつける必要があり危険である(III+)。
トイ状の滝
明るい中の連瀑
この後、連瀑の先に、屈曲部の14m滝がそびえている。
左の凹角を登った(ノーロープ )。
この先はさらに谷が開けてくる。
⑤ 前進
冷気を感じると、その先は雪渓。
時刻は13時でここで幕営するには早すぎるが、夕方に一雨降るとの見立てで、行動継続が悩まれる。
しかし本日は進むことにした。
雪渓をしばらくこなして、目的のスラブ沢を発見するが、かなり傾斜が立っている。
スラブ沢の出会付近にも幕営適地はなかった。
遠方で落雷音が聞こえるようになり、パーティに焦燥感が生じてくる。
スラブ登攀中に土砂降りとなれば、不可抗力の死につながる可能性もあるが、
稜線までの距離が近く、すぐに登って反対に降りれる可能性があることから、滝に取りついていった。
⑥ ビバーク決定
左の凹角からの登りは、ぬめる外傾箇所がいやらしく、今回の中でも悪い登りだった(IV-)。
その後は危険な登りはないが、スラブやブッシュを急ぎ登っていく。
100m弱高度をあげた所で、雷が迫ってきている感もあり、少しだけ開けていて緊急ビバークを決定。
タープを張って、嵐接近に備える。タープには雨が叩きつけるようになってきて、徐々に雷が接近。
⑦ 恐怖の嵐
56年前の同じ季節に西穂高岳落雷遭難事故 が発生しており、大量の死者を出したことが頭をよぎる。(11名の死者と12名の重軽傷者)
僕らは山頂近くに来てしまっており、被雷、死亡リスクの上昇は明らかだ。
希望的観測を保つために、1時間に落ちうる落雷数を逆算しつつ、生存率を上げるために地面にゴム底のみ接して、3人がくっつかない基本の徹底に努めた。
2度、間近に破裂音を伴う爆雷が炸裂し、生きた心地がしない時間が続く。
※ AIの力を拝借
そんな中、大雨による増水が鉄砲水と化して、水量が爆増。水が流れてなかったところが川となり、水量が100倍近くになって、滝がタープに迫ってくる。
⑧ テンバにて
かなり追い込まれたが、徐々に落雷頻度が減り、水量も減ってきた。
我々は「セーフ」のポーズを決め、過去最悪のテンバで生還を喜びあった。
嵐の過ぎ去った空
減った水量
床が斜めでボコボコなのでエアマットが使えず、着替え後、シュラフを丸かぶりで寝たが、1時間ほど寝ると腰が痛くなって、寝返りを打つ展開が継続。
深夜にポムチム氏の「一睡もできねー!」という鎮痛な叫び声が響き渡っていた。。。
朝はカップ麺を食したが、今回は食糧不足で限界まで調整して、生還に備える。
朝のテンバ
⑨ 詰めと下降
スラブ登りは難しい箇所はなく、ひたすら高度を上げていく。
反対側に降りて、トマのルートを辿るということで、ルート見解の相違が生まれた。
結果的にトマの2006年9月の下降ルートとは異なっていたが、より多くの滝が見れたので良かった。
8m滝を右岸から巻き降りる形で花降沢右俣に下降。
⑩ 花降沢右俣
2条垂瀑の11m滝とその下の13m滝はロープを出して下降。
以降は階段状の滝が多い。
2段8m滝
花降沢の本流に出会った。
⑪ 花が降る谷
大きな滝は花降沢の20m大ナメ滝で、見事な景観を見せる。
その下のあたりは花が溢れる花降沢に相応しい景観が広がっていた…
8m斜瀑を左岸からクライムダウン
ここでTG-6のキャップを落としてしまい、釜を探索も見つからず…
⑫ 違和感と連続下降
泳ぎを避けて右岸をへつっていたところ、スリップして右の脇腹を捻りながら着水。
大きな痛みはなかったが、徐々に右脇腹の違和感が強くなっていく。
大きな滝を下降すると、これは花降沢の大滝といっても良いような23m名瀑の前に降り立った。
2段8m滝を左岸から巻きぎみに降っていく際に、脇腹の痛みが強くなる。
腹筋に力を入れると激痛が走る…
右の体幹部が本来の力の40%しか出せないので、命の危険を感じた。
さらにその下は8m+15m滝の連瀑で、15mは懸垂。
舞氏は左岸を身軽なムーブで降り立ったが、同様のムーブはこの脇腹では不可能。
岩角にロープをかけて8m滝を下降することができた。
⑬ 灰ノ又沢
連瀑の滝
右岸トラロープの4m滝
2条6m滝
左岸に人工物が横たわる釜滝は着水せずに、人工物を掴み続けてトラバースを行った。
最後のでかい滝も危険な下降は避けて、手前から巻道に乗って撤退。
もう橋は見えたが、一人で巻いた滝前まで行ってみた。
7m級の壺広き滝。
灰の又沢の小さな名瀑。
右の脇腹に怪我をしてしまったが、落雷の危機を乗り越えることができ、この滝に合掌。
沢を脱渓した。
林道では大量のアブに纏われたため、はたき続けて、三桁は地に帰っていただいた。
銀山平温泉 白銀の湯 → 百福宴 にて爆食。
完!!!
⑭ まとめ (夏は終わった!)
明るい滝沢からゴルジュ感ある灰の又・花降。
越後滝風景の真髄を体験できて、大いに満足しました。
一方で右脇腹は9番の不全骨折であることがわかり、一週間を経過しても痛みの波があり予断を許しません。
その後、セグメント分けした右の肋骨の9番をVR空間内にて確認し肺や肝臓との位置関係を含めて解剖的な理解を深めた。
POINT
① 落雷に関して:真夏は大気の安定さに関する情報収集が肝要, 現場では標高を上げないこと, 冷静に生存率を上げることに集中
② 怪我に関して:運動不足, ビバークで腰を痛めてたのもあるかも, 予防力強化を決意
③ ノーロープ登攀に関して:インフレ化の傾向, 自分をよく知ることが重要
④ 体力・登攀力に関して:大きな問題はなかった
⑤ 現場勘に関して:あまり戻って来ていない