滝いろ|鳥屋待沢の滝 右俣をゆく

活動記録


鳥屋待沢の滝

鳥屋待沢 右俣―【神奈川県 愛甲郡 清川村 煤ヶ谷】―

コメント

東丹沢への理解度が低いな
と思っていて、バス停からたった30分で、
入渓できるところに惹かれて訪問。

特に後述する
クワイエットルームでの体験から、
人工的に支点を作る技術取得
の必要性を痛感するなど学びの多い沢でした。

滝の記録

訪問日 2014年11月23日
活動の形態:沢登り(単独)
装備:サワートレッカー, 8mm20m
感動度(10m大滝):まあまあ

①ヒルがいない時期に

東丹沢はヒルの巣窟として有名で、
11月はヒルも少なくなるので
格好のシーズンとなります。

本厚木駅⇒宮ケ瀬湖行きバスで、
煤ヶ谷まで行き、谷太郎川沿いに進みます。

ゲートがある場所が
鳥屋待沢の出合いです。

そこから道をたどり、
適当なところで入渓します。

広い河原は通りすぎて、
少し釜を持った場所で準備を始めました。

②大滝まで

序盤は平凡な流れです。
写真の2条の滝あたりから少しずつ、
滝要素を帯びてきます。

下はなかなか美しかったウロコ状の滝。

進んでいくといくつかの小滝を経て、
他の記録でF1と称されている、
7m滝が現れます。

左から越えます。

次の3段8m前後の滝(F2)です。

ここを超えると大滝です。

③大滝と廊下滝の死闘

落差12mなので
そんなに大きくはないですが、
この沢の中では最大です。

少し休憩しました。

登れなさそうですが、
真下まで行くと、
不可能ではない気がしました。

しかし当然巻くことにします。

ただ、この巻きはかなり悪く、
ずたずたに足場が崩れていくので難所です。

このあとはしばらく
ミニゴルジュ的な様相となってきます。

途中の4mチョックストーン滝は、
左側に残置スリングがあり、
それと倒木を利用したきわどい登りでした。

その後、トイ状の廊下があり、
奥にこの沢の核心部である廊下奥の滝があります。

深さはおそらく胸の当たりまであり、
腰は当然つかり、
パンツが濡れるので躊躇されます。

ここは決死の大股開き、
ステミングで行きます。

疲れた時は膝の角度や体の向きなど、
いろいろ工夫してみたところ、
スタミナがもって、廊下を突破出来ました。

時間は約3分。

しかしここからが大変。

釜に落ちたくないので、
水流側にジャンプせずに左の壁を登りますが、
つるつるで足場が少なく、何回か滑落。

かなりきわどく、
命がけで廊下滝を登り切りました。

この登りで手首を逆側にして置けた時は
凄く安定した支点になることを知りました。

④III級の登り

その後も滝は続きますが、
二俣手前の6m滝は左の壁から。

まだやっぱり恐怖感があります。

そしてたどり着くのは、
鳥屋待沢を2つに分ける分岐点。

しかし、左俣には水が流れてません。
右俣の滝はなかなか形はいいです。

右俣のほうが少し、
グレードが高いとのことです。

ただ、水が流れているほうに、
いくのが王道だと思うので右へ。

出合い滝は左から巻いて越えます。

しばらくすると2段10m前後の滝が。

下段もラクではなかったですが、
上段がより困難でした。

水流沿いではないんですが、
壁が立っていて高度感があります。

登攀のグレードとして、
III級からはクライミングの領域、
とのことで、少しだけ体感出来ました。

⑤上部ゴルジュ帯と苔滝

この後いったん沢は伏流し、
水が戻ったら、右俣上部ゴルジュ帯がスタート。

幅の狭まったCS滝の直登が何箇所かあり、
二俣手前6mや2段10mよりはマシでしたが、
それなりに手応えがあります。

本流沿いにしぶとく上がっていくと、
水のない「苔滝」という名前の崖の登場です。

ここはガイドでは、
手前の右岸ルンゼを詰めていくか、
「上部が悪いので右から小さく巻く」
とのことでした。

とりあえずちょっと右から登ってみて、
苔滝の落ち口と同じ地点までは行けますが、
そこから落ち口までの道は「THE危険」、
といったところで、

ドンキーコングみたいに、
ライフが複数あって、ライフバルーンで
回復可能ならジャンプして挑戦できますが、

支点もなく単独であるため、
このトラバース、
小さく巻くのは無理だなと判断。

せめて出来る限り小さく
巻いてみようとのことで、
右のかなり急なルンゼを登っていきます。

目標は樹林帯にたどり着くこと。
そこまでいけば、苔滝上流部分へ
懸垂下降ができます。たぶん。

ひたすら登って行きました。

⑥クワイエットルームにようこそ

たどり着いたのは、
前が登れない崖で囲まれており、
自己確保できるような支点が何一つない
畳五畳ほどのやや
傾斜がゆるいエリアでした。

行き止まりです。
そして後ろの崖はロープ無しで降りれません。

通常高巻きでルートミスをしても、
支点となりうる木が
1本くらいは生えてるもので、
懸垂下降で戻ることができますが、

ここにはそんな支点はなく、
全身から血の気が引いていきました。

ありえるルートは3本。

A:写真奥の傾斜がきついところを登る
B:写真右上にあった三本の小枝から登る
C:写真をとってる地点の背後の岩場を登る

ちなみに左下は登ってきた降りれない崖です。

Aは一番急傾斜でその上も恐怖。

Bは3本の小枝に全体重を預ける必要があり、
その上もラクにはのぼれません。

Cは一番簡単そうながら
小石がボロボロに崩れます。

小石は崩れ何度も地味にずずずっと滑落。

右手中指の爪は一部剥がれ、
指先の各所から血が吹き出します。

⑦下天の内をくらぶれば

生き残るために
冷静になって考えました。

フェルト底の沢靴では死亡率100%と判断し、
崖の中、すべての荷物をハーネスに連結し、
慎重にアプローチシューズに履き替えます。

重量は増しますが、
(沢ソックス・スパッツなどの関係で)
足元の安定感は確実にアップします。

Cルートはダメなので、
Aを選択し、登攀。

意外にも登れますが、
まだ樹林帯にはたどり着きません。

後ろを振り返ると、
高さで足がすくむような崖場の中、
死の恐怖に負けてしまえば、
精神の安定が保てず終了となります。

ここはふっきれて、
全力で生還への活路を見出す
火事場のルーファイ能力を発揮し、
枝をつかむことに成功。

左側に進み尾根を越えると、
谷底が見えました。

ここで20Mロープの
懸垂下降2回で沢床に降りたてました。

⑧三峰山へ

忠実に沢を上り詰めますが、
なかなかに傾斜きつくなってきます。

しかしさっきまでの傾斜に比べれば雲泥の差です。

ここまで登るのも大変でしたが、
まだ登山道までは距離があり、
25分くらいはかかりました。

このまーるい登山道に辿り着き、
さらに6分くらい進むと三峰山頂上でした。

時刻は14:20分前後でした。

⑨下山とまとめ

不動尻方面におりますが、
その後煤ヶ谷方面に戻るつもりが、
普通に林道を歩いてたら
広沢寺温泉に行ってしまいました。

総行動時間は9時間です。

クワイエットルームでは
ハーケンとハンマーをもっていれば、
(もしくはそれ以外の支点をとるもの)
少なくとも自己確保は
できていたかもしれないです。

あと沢用以外の手袋、
医療用具など装備面の強化、
ムーブの力を鍛えないといけないと痛感です。

苔滝の大高巻きは絶対にやめましょう。
苔滝手前の右岸ルンゼを詰めるか、
そもそも左俣に入るかしたほうがいいです。

滝はそこそこ
みどころはありましたが、
ルートの取り方をミスすると、
今回のような致命的な状況に陥ります。

広沢寺温泉から、
セブンイレブンの厚木七沢北店まで歩き、
ここで次の帰りのバスをまちます。

アクセス

Step1 小田急本厚木駅へ
Step2 バスで煤ヶ谷へ行く
Step3 谷太郎川沿いに進みゲートで右折
Step4 10?15分ほどで適当に入渓

Follow me!

PAGE TOP