東ゼンの滝
谷川連峰 東ゼンの滝【新潟県 南魚沼郡 湯沢町 土樽】
SUMMARY
日常にピリリとした緊張を。そんな気分が僕を上信越へと向かわせる。スラブで構成された中級よりの谷で、良くも悪くも2段60m大滝とどう向き合うか、どのように対処するかがほぼ全ての核心となる。水は多めに持ってきましょう。
滝の記録
訪問日 2020年6月27日
活動の形態:3級下 (単独) / 車
装備:7.5mm×50m, 沢タビ(フェルト), チェンスパ, ミラーレス一眼(広角・中望遠), 三脚
感動度:かなり (大滝)
①スパイス
挑戦がしたくなった。
決して、死にに行くわけではなく、それでも何かしらはリスクがあるような、なまりきった体を奮い立たせて、新潟の湯沢へと向かった。
②6月と雨
湯沢町の土樽駅のそばから、平標新道へ向かう林道を進む。林道終盤は、ややダードだが問題はない。
ゲート前の駐車スペースに着き、少しずつ準備を始めていくが、前日から雨がしとしと降っていて、明らかに増水している。
増水はしているのだが、この後今日はあがるのだ。
スラブの沢は増えるのは早いが、減るのも早いという。
谷川連峰の北面の沢に、6月に行くのは明らかに早いが、今年は雪渓が少ないようなので行けそうな気がした。
③耐えるアプローチ
歩き始めてしばらく後、穴の空いた林道を目撃。
橋を渡ったら、そのまま林道を行き過ぎては、本流の毛渡沢になってしまう。
平標新道の看板を見過ごさずに入ろう。
平標新道は薄暗い山道で、泥水を避けたり、石を飛んだり良くない道だが、中盤から歩きやすい道へと変わる。
それでも長さは感じ、疲れたころに、ようやく仙ノ倉谷にぶつかる。
④二俣まで
沢に入っていくと、わずかな滝と、長いゴーロがあり、足つぼを刺激しながら歩く。
そう、沢足袋は足が痛くなるとたまに聞くが、しかし、僕はそんなに気にならない。
薄い分、河原を歩いていると、自然とツボが刺激されて、足裏が気持ち良く、パフォーマンスが良くなっている気さえする。
ゴーロ帯の真ん中の丘を歩いていたら、気づけば支流側にいて、本流まで藪漕ぎが必要な異常事態も起きたが、こんなものはまだ、可愛いものだった。。
ナメが出てきて、これをかわして行く。
一箇所、左から行けそうなバンドトラバースが、降りるところが悪すぎて、引き返し。
反対の左岸から巻き気味に越えた。
2段7m滝
奥に見えるのが、西と東のゼンを分ける岩だ。
タニウツギ
⑤緊張のスラブ
そして二俣。
正直どちらも立派な滝だったので、どちらに進むにもやばいだろう、というような感情がすぐに湧いたが、
一旦忘れることにする。
予定通り東ゼンへ。
出会いのナメ滝を越えても、緊張する風景は続く。
15m級のナメ滝
ハの字の滝
⑥SBと屈曲部の滝
スノーブリッジは下を潜って、滝前に。
上部を含めて15m級の滝
この滝はとりつきの足場が悪く、
水流をバシャバシャ浴びるので断念。
もう一回スノーブリッジを潜る羽目となり、左から越えた。
そうすると、屈曲部に20m滝がかかっている。
これはわずかな弱点を重ねていく
なかなか険しい地形
⑦大滝の前にて
そうしてこうして、大滝!ガスが立ち込めている。
滝に少し近づいてしまうと、平で落ち着けるところは少なくなる。
ここまで来てさあ来た道を引き返そうというのは、遠慮しておきたいというのが実感です。
最下部を横から。
⑧ロープを出す
右から取りつきます。
途中までは簡単。
そこから水流に近づくバンドが見えるところが、下段の上半分になっている。
近づいてみると、傾斜は結構あり、滑ったり、弾かれたらそのまま人生が終了する。
ここはロープを出すことに決定。
単独なのでZ法を試してみることにします。
道具のセットを組んで、灌木は心許なかったので、ハーケン一枚を支点に。
ロープがスムーズに出るように、バックに、末端から入れ直して出発。
⑨するすると攻める
水流に近づいたあと、乗り上がって、右に大きなムーブをする箇所が核心。
ここは本日のような水量だと、水がジャケットの袖を通して侵入してくるので、長い間粘ることができないのが難しい。
なんとか突破して、右上に。
残置ハーケンは4~5本はあったが、逆にランナーのカラビナが3本しかなくて不足してしまった。
最後は、下段の落ち口の水流沿いを直登。
滑りそうだったので、この直前で、必ずランニングが取りたかった。そして、取ることができた。
⑩Zの残り
登り切れたが、カラビナ類が残置されているので、回収に降りなければならない。
今回のロープは、7.5mm 50mのロープで、システム上、シングルでの懸垂下降となる。
7.5mm 1本で距離20m以上の懸垂は不安。
それはロープ径に加えて、自身で構築した2枚のハーケンの支点に対してもである。
バックアップのスリングは、ロープが1本だと滑ってしまったので、
最大限巻き付けたら、停止してくれるようになった。
極力、クライムダウンを心がける。
ふわふわした異質な時間で、スタート地点まで帰還。
ここからは全て回収しながら登り返し。
ロープを掴むような登り方はしなかったが、安心して登れた。
本来Z法は最初空身で登って、2回目の登りでザックを背負うようだが、
今回はその逆、つまり2回目が空身。
フィックスによる安心感と、身軽さ、2度目という3点において、2回目は気楽であった。
⑪できれば悲しい思いなんて
上でシステムの回収に入る。
何故かYUIさん Good-bye Daysの大サビが溢れてきた。
上段は目の前だが、一刻も早く
この場所を抜け出したくて、
ミラーレス一眼カメラを出す気がおきなかった。
しかし、この上段の左岸巻きは、途中まで終始足場が悪い。
足場が悪いというのは、足を胸の高さまで引き上げないとスタンスがないようなもので、
「あれ、俺って今日ボルダリングだったっけ??」
と、錯覚するほど、腕が消耗。
滝に近づけずに、ぐんぐんと高度を上げたら、大滝の上の10m滝も一緒に巻いてしまった。
最大の難所は越えて一安心。
⑫草付きに泣く
横の広がりが印象的
連瀑の景観はなかなか。
15m級のこの滝は立派!
直登はする気になれず、右から巻き気味に行くと、いったいどこをトラバースするんだ?!
というような、えげつない草付きが終始連続。
自分の目を疑うような斜面に、気づいたのは、チェンスパを使おうということ。
沢タビにチェンスパをつけたところ、この草付きが通行可能なものに変わり、巻きを完遂できました。
今思えば、ゴルジュハンマーの、バイル機能も使うべきでした。
⑬虫を避け、上り詰める
上部と下部で形が変わって面白い滝。
この沢で気になったのは、飛ぶ虫類。
それはもう、小さなものが、中心で顔周りにたかってきて、不快も不快だったです。(のちに、ブヨと判明!)
東ゼンの標高差は地味に大きく、それは1000m以上。
水は意外と上部まであり、黒滝は左の細かいところを頑張って登った。
日本の固有種「キヌガサソウ」
最後は笹地帯に入る
⑭攣って、登頂
水分補給を怠ったまま、強行を続けて登りまくったら、両足のももの横に張りが出てしまう。
最終的に、登山道に着く直前に、完全につってしまった。。。
やっと登ったけれど、両腿をつって、ぺたんと草原に座り込んで5分くらい動けず。。
ここからは、平標山を登頂。
無心でうどんを平らげました。
水分はもうすぐなくなりそう。。。
南に見えた「大源太山」
北沢本谷で登った新潟の山とは違う群馬の山。
平標新道を下っていきます。
⑮限られた水で滑る道を
これは、長くて、滑りやすくて、所々急で、神経を使います。
もう通りたくない!って感じです。
水がほぼないので、なんだか脱水気味で力も出ない。
仙ノ倉谷に出会ってもまだまだ長く、水分も足りないので、苦しい状況は継続。
林道に出たあたりで、スマホの残量は残り1%。
ログのために、なんとか持ってほしい。
浄水ろ過装置
スマホは車についた直後に、力つきました。
完!!!
⑯その後
レンタを当日中に返却が不可能な時間になったので、万太郎、大源太以来の岩の湯でリフレッシュ!
その後、「道の駅こもち」で仮眠。
深夜2時台に自宅に到着し、レンタは翌朝返却して完了しました。
⑰まとめ
POINT
① 東ゼンはスラブ力がないと苦戦, チェンスパ・バイルを利用しよう
② 大滝:下段上部の水流沿いをロープなしで行くのは危険行為。一瞬の滑りが人生を終了させる。
③ 難点:ある程度危険+ブヨが多い+下山が結構長い
距離:16.3km / 累計標高差:3203m
僕はスラブに弱すぎると実感しました。やはり、ラバー靴も試していかないといけないのか?
レポとして6月の東ゼンは貴重かもしれません。想定より長くて体力を消耗。中望遠レンズは余計でした。
大滝の滝前はなんか荒れてまった気がするんですが、どうなんでしょうか?
Z法はそんなに危険すぎないところで、ちょこちょこ真剣に試して、単独でも安全確保しながら登っていきたいです。