焼石 尿前沢の滝
尿前沢の滝【岩手県 奥州市 胆沢若柳】
コメント
その名は「しとまえ」。
不思議な青色に気を惹かれたのが最初。
4年前に、単独で岩手遠征に出た際、
行きたかったのだが、
どうしても死の恐怖が脳裏から離れず、
課題として残っていた。
今回、何段階も大きくなって(?)、
再び岩手の地に足を踏み入れた。
滝の記録
訪問日 2019年8月24日
活動の形態:3級沢登り(2名)/ 車
装備:7.7mm×40m 2本, 沢タビ, チェーンスパイク, 寝袋, ツェルト, 撮影機材
感動度:かなり~限りなく(全体的に)
①緊急修理
僕の街に、
滝ペーさんがやってくる。
どうやら物語が始まろうとしている。
出発のお知らせだ。
ところが、高速に乗って、
しばらくというところで車の様子がおかしい。
カランコロン。。。。
コロロロン。。。
と、2回音がなったかと思いきや、
「バスコ!バスコ!バスコ!!!」と、
明らかに異音が車内に響き渡り、
路肩に停車。
見ると、バンパーがイかれている。
ここは、車両整備士になりきって、
左右両面から緊急補強。
こんなんで、大丈夫かな?と、
不安も強かったが、
以後今回の旅中で問題になることはなかった。
②第九を流そう
ルートは東北道ではなく常磐道を選択。
途中でスイッチしたが、
基本一車線で、前に遅い車があると、
みんな一緒にそのペース。
最近、煽り運転が問題になっているが、
そうやって煽ってしまう人や、
煽らないけど技量や精神が、
未熟なドライバーに対して、
差別的、攻撃的発言を行ってしまう人は、
クラシック音楽を流そう。
オススメの1つは第九。
第九というのは、
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの、
人類の最高傑作と呼ばれている楽曲で、
深みの次元が違う。
音楽に関わらず、
自分がどの世界(雰囲気)に、
感応しているか(心地よいと思うか)?
これはめちゃくちゃ大事!!
第九の世界に感応するということは、
抽象度の高い、煽り運転とは無縁な、
状態に近づけるということ。
ちなみに1楽章から第4楽章までで、
だいたい一時間ちょっとあって、
運転の時間の目安にもなる。
(上のYoutubeは少しテンポが遅め)
岩手に到着した。
③雉を見て、いざ!
二人だと快調に岩手。
コンビニに立ち寄って、
さらに進んでいくと、
途中からダートへと変わった。
岩手県の滝はダートが多い気がする。
途中、雉が歩いているのを発見!
雉なんて、桃太郎でしか、
見たことがない気がするが、
すぐに、そう判断できたのは、
なんなんだろうか。
(キジではなくて、ヤマドリでした!希少種です。)
広い駐車場は、
中沼登山口と言われている。
緩い道を辿って、
尿前川本流へと進む。
24分で到着した。
④豪流の尿前
荒れた渓相、脆い岩、濁った水。
どうも水量が多いよう。
幅広、威圧感ある滝。
右から進む。
水の力が強くて、失笑。
しかし、ハタシロ沢、フロ沢と、
支流の合流が減って、少し水量も落ち着いて安心。
(フロ沢の出合3m滝)
⑤ミニゴルジュ
方円沢のところでは、
本流は2段8m滝をかけている。
ここは、乏しいスタンスを拾って、滝上に。
吹き出す。
ここからはミニゴルジュ。
底が見えないミルキーカラーで、
トラバースをしたりすると、しんどく、
一回落ちてしまった!!
しかし、落ちたら浅くて突破笑
弘田さんの記録よりも、
ずっと水量が多い!
最後は、2mトイ状滝を、
つっぱりから上手くかわして終了。
なかなか、アスレチックでよかった。
⑥三ツ折の滝とチェンスパ
そうして、三ツ折の滝。
滝ペーさんは頑張って近づいていた。
意外と悪いようだ。
しばらく休憩したら左側から巻く。
ここは、戻らずに巻き始めると、
ドロドロで、悶絶。
高巻きを考えると、
フェルトよりも、ゴムが推奨されていたが、
僕はいつも通りフェルト。
苦戦しながら、楽なところまで登る。
ここで、秘密兵器
「チェーンスパイク」を装着。
これは、数ヶ月前に、
志水哲也さんにオススメされたもので、
その場で購入。
沢足袋でも使用可能なことを確認していた。
その泥斜面を捉える動きの鋭さに、身震い。
羽が生えた感覚。
調子に乗っていたら、
気づけば片方の足から
なくなっていることに気づく。
速攻で戻って発見したが、
これは、ベルトをしっかり巻かないとダメで、
アイゼンのように固定が必要なので注意です。
三ツ折滝上に懸垂下降。
⑦白髪と大滝の集積
そうすると、こんな滝。
10mで、谷が曲がる箇所に、
轟々と水を落としている。
名付けるなら「白髪滝」。
一見厳しそうに見えるが、
左岸から小さく高巻きの道がある。
2分程度で終了。
落ち口からの風景はいい感じだ。
谷を曲がると
「おお!」
という感じで大滝の姿に少し興奮。
大滝前ではずーっと、雨。
少しだけ止んだタイミングで、
カメラを持って近づいた。
滝壺の色は独特で綺麗。
尿前の大滝前は、
ガレが山積していて、
全てのゴミが集積されていく場所に見えた。
尿前沢一の落差のこの滝の前と後で、
何か変わっていく。
⑧右岸トラバース
大滝は右岸巻き。
あんまり、いい噂を聞かないトラバース。
ガレ場を登っていき、
途中草付きに入ったりしながらトラバース。
そうしてトラバース開始地点に行き着く。
ここでロープを出す。
さらにチェーンスパイクを装着。
一箇所、小樹木の枝をまとめて、
ランニングを取り、進む。
チェンスパを履いていたことと、
ランニングが取れたことから、
全く緊張せずに終了。
真新しい残置スリングが、
2本ある箇所でビレイ解除。
ここから上段に降り立った。
(40m一本だと、上段滝壺までの下降は、
少し距離が足りなかった。)
⑨上段とミルキーブルーフォールズ
上段滝前は絶品。
水がとっても綺麗だし、
振り返った高度感も素晴らしい。
30m以上はある高さ。
この場所が一番の思い出かもしれない。
右側から登っていける。
3m滝
5m滝
お次の5m滝
最近、沢の中で一番感銘を受けるのは、
必ずしもメインの滝ではなかったりする。
尿前沢に来る直前、
やり残した課題とか、
終わっていないことがいくつかあり、
全てを終わらせて、
滝に集中できる状態を作ってこないとダメだなとか
ごちゃごちゃ考えていましたが、
ここで来るミルキーブルーの滝群は、
そういったことを吹き飛ばす綺麗さ。
僕が尿前に求めていたものが、
ここにはあった。真に良い場所。
目の前のものは全力で楽しむ。
それはとても大切なこと。
⑩気まぐれな雨雲
晴れたり
曇ったり
砂時計型
逆Y字型
7mの整った滝前で休憩。
後ろのナメも綺麗。
出発し始めたら、
また天気が崩れてきてしまった。
しかも、かなりの大雨。
次の滝も連続して巻いて、
沢に降りる前に、木々の中で、
雨宿りをすることに。
「やんでーー!」
と、何回もお願い。
そして、仮眠。
岩手までの遠距離ドライブで、
不足していた睡眠をここで補った。
雨宿り時間はおおよそ40分。
沢は水量が明らかに増えてしまった。
増水したナメをゆく。
しかしやがて快晴に!
左岸支流の滝は見事な感じに!
夫婦滝もスラブの奥底で絶景!
水は濁っているが…笑
⑪夫婦の登攀
夫婦滝の登攀。
それは右岸の岩場。
支点が取れない7~8mの岩場が核心。
油断はできないところ。
決して登りやすくはないが、
うまく登ってくれた!!
僕も上に上がっていくと、
緩くなった場所に草付きが生えて、
それよりも上はまた岩がそそり立っている。
上に向かうのは非現実的だ。
とにもかくにも、
この場は密度が濃かった。
お互いが、この場で、
集中力を失えば「死」というのを、
なんとなく勘づいていて、
ピリリとした感じがなんとも心地よい。
ここは落ち口トラバース。
水流の手前に残置のボルトが2本あったので、
ここはつるべ方式で、リードを交代して進む。
ランニングが残置ボルトから取れたので、
緊張はしなかったが、滝横の登攀は、
高度感がなかなかあるところ。
⑫混乱とミス
上は沢幅いっぱいにナメが広がっていて、
残置のボルトやハーケン類が一切見当たらない。
別に、支点を構築すれば良いのだが、
どこも脆くて、かなり取りづらい。。。
少し奥まったところで2枚取ったのだが、
どちらもバチききとは言えない、
6割と、8割といった感じの効き方だった。。
普段使用している、
アクメという笛をこの沢で紛失してしまったため、
登攀前に滝ペーさんの予備の
モンベルをお借りしたが、
あんまり響かない。 https://rcm-fe.amazon-adsystem.com/e/cm?ref=tf_til&t=splasherz-22&m=amazon&o=9&p=8&l=as1&IS2=1&detail=1&asins=B000SE9NMY&linkId=487ca8cca550cee5d86786d86a59bee2&bc1=ffffff<1=_blank&fc1=333333&lc1=0066c0&bg1=ffffff&f=ifr
向こうからの合図もあんまりわからず、
凸の字に出た岩の反対側にお互いがいて、
しかも滝の瀑水が横にあるため、
意思疎通が困難になった。
ハーケンの支点構築に時間がかかり、
急いでロープを引いた後、ビレイ体制を構築。
今回のビレイポイントが大きく違ったのは、
まず、支点に100%の信頼ができないこと。
なので、そこからロープを伸ばして、
フォローが登るのが見えるところまで、
いってビレイすることができなかった。
さらに、引っ張ったロープ
全てが水に流されて、
全部、下側に行ってしまい、
普段見慣れている景色と
変わって頭が混乱。
その状況下で、動き始めた?と見えた、
滝ペーさんの動きが全く止まってしまい、
これはひょっとして、
ロープの流れもなんか違うし、
「全然違うところを確保していて、
彼はまだスタートすらしていないんじゃないか?」
と勘違いをしてしまう。
そこでシステムを冷静に
把握していれば良かったものの、
確保器からロープを一度外してしまった。
⑬越えてフェルティーな世界へ
そしたら当然だが、
全ロープが勢いよく流れて、
再び、ロープを引いていく。
も一度、確保器にセットする
というタイミングで、
「こわかったーーーー!!!」
と滝ペーさんが登ってきた。
残置ボルトから、
ランナーを外すのに手間取っていて、
さらに滝横の登りのところにいたら、
ロープがふってきて、焦ったとのこと。
ビレイされていないことに気づき、
残りのロープを掴んだのか?
なんとかまとめて這い上がってきたようだ。
本当に申し訳ないところだったが、
このあたり、成長してくれていて、
僕のミスを帳消しにしてくれて感謝しかない。
この後は、小滝が続いていくが、
徐々にフェルト優位な沢に変容。
水の色も、
もうブルー要素はなく、
白くなっている。
大ナメ滝は落差あり、感動。
左をヒタヒタと登るが楽しい。
⑭スタスタと雪渓
この後はペースを速めて、
スタスタと滝を越える。
10m滝は登ってる記録もあるが左巻き。
9m滝も同じく登らずに右から巻き。
振り返ると優しい山容
それを越えると、
沢には大きな雪渓があった!!
どうしたもんかと思って近づいてみると、
突然、「ゴゴゴゴゴーーーン」と
爆音が沢にこだま。
崩落したんだろう。
僕らは顔を見合わせる。
実は雪渓の左横が歩けるようになっていて、
乗らずに進むことができた。
絶景!!!
休憩。
ここは二股で滝になっている。
⑮〆る
もう顕著な滝はなくなり、
後は忠実に沢筋を詰めるが、
最後の最後でヤブが多くて沢筋が面倒になり、
強引に右岸を掻き分けること、5分。
登山道に這い上がることができた!
下山路は緩くて歩きやすく、
途中、「沼」が迎えてくれるのも嬉しい。
このような沼のほとりで
ゆっくり時間を過ごすのも悪くないかもしれない。
完!!
コースタイム
6:44 出発(カメラ忘れて戻る)
7:11 入渓
7:20 最初の滝
7:39 ミニゴルジュ IN
8:07 三ツ折滝
9:40 大滝前
10:01 高巻き開始
10:55 大滝上段前
11:45 7m滝前で休憩
12:14 大雨で待機開始
12:53 出発
13:03 夫婦滝
13:58 夫婦滝登攀終了
15:18 雪渓の上
15:47 登山道着
16:26 避難小屋
16:58 上沼
17:13 中沼
17:42 駐車場着
⑯その後
温泉がまた良かった。
場所は国見平温泉 はごろもの湯
匂い、プライス、周りに何にもない感じ。
温泉に入るタイミングで、
いやに目が腫れていることに気づく。
行動中は気にならなかったが、
随分とやられてしまったようだ。
今回は十分やりきったので、
翌日は滝に行かず、夜のうちに、
戻り開始。
金成→阿武隈まで運転した後は、爆睡。
早朝、岩槻ICで降りて、
川口市の吉野家で食事をして、
赤羽駅で解散。
筋肉痛の体とは裏腹に、
気持ちは澄み切っていた。
⑰システム
早速、家に帰って、システムを復習。
アクメも、予備を含めて3つ購入。
通常だと、左写真のように、
セカンドの登攀側には
ロープが一本しか行かないが、
水で流されると
3本が登攀者側に向かってとたんに、
見慣れない風景へと変貌します。
納得がいくまで部屋でトレーニング。
これは安全登山に欠かせないことです。
⑱まとめ
尿前のキーワードは
強弱、緩急、ギャップ、楽園、調和、雨雲の気まぐれ、成長、密度、ミルキーブルー。
僕は2~3年、主に単独で沢に行ってきた。
だから、現在の方が
客観的には難易度の高い沢に行っているが、
フリーソロの連続だった昔の方が
はるかに怖い思いをしていた。
去年滝ペーさんが現れて、
ここまで飛躍的に成長してくる中、
僕も真剣にロープシステムや撮影を学んだ。
今回、あってはならないミスもあったが、
間違いなく僕らの今までやってきたことが、
1つの形になった結果。
日帰り3級沢のスタンダードである、
尿前沢を遡行できたということは、
多くの3級沢に挑戦できる状態に突入したのかもしれない。
僕にとって、
下から遡行した日帰り沢では間違えなく最難。
けれどまだ余力が残っていたところが、
なんだかじわっと嬉しかったです。