滝いろ|竜ノ門の滝 / モーカケの滝

本丸

竜ノ門の滝 / モーカケの滝

下の沢敗退記【福島県 南会津郡 檜枝岐村 駒ヶ岳/七入】

滝の記録

訪問日 2021年8月7日

活動の形態:中級滝めぐり (2名 / 敗退)/ 車

装備:8mm×30m(2本), ミラーレス一眼(広角), 三脚, 沢足袋(フェルト)

感動度:かなり

① 追憶の下ノ沢

なにかしら今、記しておかなければならないと思った。

この年の7月から6年以上勤めた会社から転職。

拠点も東京中枢に移動。全てが新しい激動の日々が始まっていた。

当週も序盤に九州出張があり、慌ただしくも金曜深夜に東京駅に集合。

Kと福島県に向かってドライブを始めた。

檜枝岐村へのドライブはインター後に、早急にコンビニが消失するので注意が必要。

最後と思われるコンビニはナビルートだと分岐の片方で、道を通らないことがある。

道の駅で仮眠をした。

② アプローチと淵

さて、夜が空けてアプローチ拠点へとすすむ。

僕ら以外にパーティはいない。

竜ノ門の滝は滝めぐりとしても有名な滝で、見たことがなかった。

道が川にぶつかるところで入渓。

しばらく進むと淵が現れて右岸には残置スリングがぶら下がっていた。

③ 淵での出来事

空四のへつり課題で鍛えていたので、右岸から挑戦。

核心に到達するまでは「若草」グレードだろう。

そこから、僕は空身ではなかったので残置を使わずに登るのは不可能と判断。

1つめ、2つ目とスリングを掴みながら、足上げの場所を模索する。

左手ガバ、右手はスリングの中、濡れたスラブ面への超ハイステップの中、多分左手を離す必要があったんだと思う。

ウェットスラブにスリップが発生、あっと思った時にはスリング内右手に負荷、水面に入水した瞬間に強烈な痛みを一瞬感じた。

このまま泳ぎに変更し、小滝に突入。ステミングを多用し、突破して上へ。

Kは最初から泳ぎで、この小滝を登るのに苦戦。

お助けを出そうかと準備してたらなんとか突破してきた。

しかし、右手小指の違和感が強い。痛めてしまった感。

④ 下段から上段へ

下段。。。

下段の場

右壁からロープを出して登った。

ガバだらけの階段状なので問題はないのだが、指が痛くて右手のホールディングが甘甘なので、全ての動きを丁寧に慎重に登らざるを得ない。

中間で一本、ハーケン支点。

無事登り切った。

目の前には竜ノ門上段が見事な姿を見せている。

その場は、発達した岩空間で上部のアンカー作りに苦戦。

かなり離れた灌木にまとめて取り、Kのフォローに努めた。

K合流後右手の手袋を外してみると、小指が尋常ではなく紫色に腫れている。

お互い、これは骨折じゃんと確信するような見た目で、僕の方から撤退を申し出た。

この時点で、空四のサマーチャレンジも終了?

上記の写真の撮影を行なった。

⑤ 巻いて展望台へ

左岸の巻きから展望台に向かうべく巻きを継続する。

小指が折れていようが、樹林帯の高巻きは得意中の得意なので、最短ルートで下流部へ展開。

無事、展望台に辿り着いた。

カメラのレンズが広角しかなく、竜ノ門の滝をズームできなかったのは残念。

ここで後続パーティが現れた。

これは??

だいぶ距離があることから向こうが展望台の様子に気づくことはなかった。

僕らの分の健闘を託して、帰路についた。

ログ

⑥ モーカケの滝へ

この後、あまりにも時間が早かったので、モーカケの滝の直下へ。

Kはなぜか早々に諦めてしまった。

この滝の直下はなかなかいいところで、滝の源体験的な何かを思い出すことができた。

また、右手がほとんど使えない中で行ったことでギリギリ辿り着ける感が達成満足度に繋がるかもしれないと実感した。

この後、温泉には寄らずに帰路へ向かう。

ログ

⑦ 小指の状態と対応

東京駅にて解散し、家へ。その後土曜日でもやっていて家からも行ける整形外科にギリギリ到達。

診断の結果、右手小指 基底骨の不全骨折

右手に包帯がぐるぐる巻かれた、シーネ固定が始まった。

このシーネ固定というのは苦しい。

特にシャワーを浴びるときにビニール袋に突っ込んだまま、タオルとガムテで手首をぐるぐるまきにして行わなければならず不快だった。

入社直後にして、滝とボルダリングが双方不能になり、究極の仕事集中環境が完成。

シーネ固定は幸い2週間で外れ、その後2週刊は小指薬指の2本同時テーピング。

1ヶ月立って小指1本のテーピングに切り替え。完治は2ヶ月-2ヶ月半と言われている。

⑧ ボルダリング論

ボルダリングをやれば安全に山に行けるようになるのか?

それは、そうとも言えるし、そうとも言えない。2つの側面がある。

僕は空四に行く前から一般的な滝屋の中では登攀力を保持していた。

その中で9ヶ月ほど登り、登攀力のグレードは2段階は確実に上昇。

しかし、普段やっているからこそ、挑戦したい気持ちが生まれ、そこでのトライでの怪我というリスクは増える。

なおかつ撮影をする滝屋は荷物が重くて、練習と現場のギャップは大きくなる傾向にある。

僕の場合は突き指を拗らせていた小指にはもともとかなりダメージが溜まっていて、怪我をしやすい個所だったのだとは思う。

⑨ 虚無感

リハビリを終えて、秋に行きたい場所として、1-2個所思案してはいたある日一緒に計画を立てていた仲間(ペーちゃん)から【笹穴沢 決行(済)】のお知らせを受けた。

笹穴沢は長らく行きたいと思っていた場所で、秋の訪問を楽しみにしてたが、膝から崩れ落ち、骨とともに塵になってしまいそうな虚無感に襲われた。

しかし全ては大きな自然の流れ、意思なんだろうなと思う。

⑩ 大きな流れ

空四で圧倒的に登れるようになって、それでトライしたい気持ちになって怪我して仕事に集中。

目標となる沢計画が飛んで、終わりなきKAL(高頻度アルパインライフ)という円環の輪の中からの脱出を示してくれた。

人生には仕事に集中しなければならない時がある。

僕はまたどこかで滝の頻度を増やす時期があるだろう。

しかしそれは、今の円環の中を回転するのではなく、人生のステージを上げてからになると、そう確信している。

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