SUMMARY
天気に翻弄された週末。撮影によって、一定以上ビジュアライズされていない谷には、その樹林の深さ・滝の豊さに驚かされる。
マイナスイオンに満たされた濃厚な滝体験と、大滝をめぐるミステリーの結末は?穴の空き続けたチーズの先に今回の結果を得ることになる。
滝の記録
訪問日 2020年7月19日
活動の形態:2級(3人) / 車
装備:8mm×30m (2本), ミラーレス一眼(広角+中遠望), 三脚, 沢タビ(フェルト)
感動度:かなり (25m直瀑)
①動的に
今週も動きながら考える。
前日夜にあっきーさんと合流して、
道の駅「みとみ」へ。
2時間くらい外で横になれて、
朝になると、大量のツバメが子育て。
やがてサモハンさんに合流する。
サモハンさんというのは、
関東の滝仲間では有名な方だが、
武道家で、屈強な体の持ち主。
7年前の両門の滝や、年が明けた雲龍。
他にも、岩トレや、忘年会などで、
ちょくちょくお会いしている。
4回目となる西沢渓谷の駐車場に到着。
1回目:七ツ釜五段の滝
2回目:両門の滝
3回目:ヌク沢の大滝
②田部さん
装備を整えるが、サモハンさんは、
本日の目的地を「ヌク沢」だと聞き違えていた。
林道。
笛吹川の原流域は、
首都圏の滝屋・沢屋の身近なフィールド。
田部重治に思いを馳せる。
彼は今から107年前に初めて東沢-信州沢を遡行。
僕が両門の滝を見たちょうど100年前。
「流れは二分せられて私たちは東沢を行った。
甲信の境から尽きぬ深林を、曲り曲って来る東沢の流れは、初め想像していたよりも、遥かに豊富な水量と、遥かに雄大な規模とを以て、流れて来ることがようやく分って来た。」(田部重治 『山と渓谷』より)
彼らは塩山駅から歩いて行ってたようで、
現在の駐車場まで、距離にして「20.4km」。
活動の重みが違う。
③谷に入る
ナレイの滝は遠目にも物凄い水量だった。
ヌク沢もド派手な水量。
途中で渡渉。
対岸で踏み跡を辿ったら、
鶏冠谷に続いていた。
出会いから小滝が連続。
薄暗い渓相だが、深い樹林に包まれていく。
⑤魚止と大岩
やがて魚止の滝。
大きな倒木が良い味。
なぜか、写真を撮った遡行図が、
ボケてしまっていて、オフラインで見れない。
これは、最近の活動で頻発していた。
遡行図は基本的にはお守りだが、
あっきーさんのスマホ内の電子書籍が、
その役割を果たすことになる。
左岸巻き。
最後はわずかな距離、ロープをたらした。
この後に大岩の滝が登場。
沢登りの遡行図にはこの名称はないが、
道中にあった、沢が詳し目の看板には記載があった。
煌めき
泡
⑥見せ場の連発
2段ナメ滝
この滝が気になってしまった。
右岸のハンバーガーのハンズ的な、
枕状溶岩(?)よくわからない可愛い岩があった。
(往年のザックスタイルを再現)
すぐ上に、3段12mナメ滝。
明暗差は強い。
ナメに現れる茶色い成分がとっても綺麗。
同じ場に奥飯森沢の出会い滝も落ちている。
最初の段だけ右から巻いて、
後は右壁を登っていく。
そうすると、逆くの字滝が落ちている。。。
10m級の、名前のまんまの滝で、
なかなか面白い滝ではあった。
流れの真正面から
左巻き。
⑦ゴルジュの通過
ゴルジュには右岸から綺麗な滝が注ぐ。
ゴルジュ内には小滝がいくつもあり、
滝の多さに驚くとともに、楽しい道中。
2mCS滝
X字の滝
Y字の滝
大ナメ滝
ようやく二俣。
⑧右俣すぐの大滝
右俣には4m滝の奥に、
大滝がそびえる。
滝前は少し狭い通路を突破。
見上げる形となって、
その迫力に圧倒される。
ふくらはぎから太ももが、
ざっぷんざっぷんと、水のブレスに洗われる。
戻って4m滝は懸垂下降。
左岸から小さく巻く。
最後は懸垂をせずに沢床に復帰。
⑨段瀑にて
小滝の通過
2連瀑
上の倒木がいっぱいの滝は、
右からアスレチックに登る。
そうしたら25m級の段瀑が。
露出がおかしい。
少し上からも。
さて、水に浸って、
左岸のルンゼを巻きぎみに越えるのは、
濡れるのを避けなければ簡単であるが汚らしいルート。
この滝の美しいルートは、
右岸を登り、中断で滝横にトラバース。
最後岩を登るところだと判断。
皆さんでの練習の機会にもなることから、
リードフォロークライミングを開始。
2往復の笛合図を運用する。
中間でハーケンを打って、
トラバースは下に下がる。
ここの通過がノーロープだと精神的に微妙だろう。
ちょっとした安定したテラスには、
ひしゃげて使えない残置ハーケン。
手持ち2枚を使って、視点構築。
サモハンさん、あっきーさんと続けて登る。
やがて後続パーティが現れた。
そして、男性の方が、僕に指示をしてくれる。
ロープが絡まったようで、
登るに登れない状況になっていたのだ。
一旦緩める。
ハーケンの回収はハンマーをロープ沿いに、
回すことで達成できたが、
もう少し距離があったら、
取りに戻らなければならなかっただろう。
テラスの上の岩は
少しアクロバディックなムーブが必要で、
協力して乗り越える。
なかなかスリリングなトレーニングに。
⑩ナメの連続
2段の滝
後続パーティは男女二人組で、
ロープが常に繋がっており、
コンティニュアスビレイシステムを構築。
女性がたちまち取り付くと、
すぐに男性側がボディビレイに入る。
勉強になりました。
8mM字の滝
スローシャッター
ナメ
また
何度も沢の屈曲を経ていく。
3段のナメ滝の上
⑪最終目的地
地形図からももう、
大滝があるとされる二俣が迫っており、
そこにナメ滝が現れた!!
そして、その上にもナメが続いている。
これが目的の40m大滝なのか?!
拍子抜けではあるが、少し撮影後、
上の段に登ると、本当に二俣があった。
うーん。
どうみても40m大滝には見えないが、
これほど明瞭な二俣もない。
各滝で撮影しているので、
時間もややなくなりつつある。
この辺りで、あっきーさんのスマホが、
水没によって電源が入らなくなり、
遡行図へのアクセスが不可能になる。
したがって、
右の沢をもう一段上まで行って、
そこに大滝が見えなければ、撤退という流れに。
結果8m級の滝は見えたところで終了。
⑫下山へ
ここからは標高差200mの登り。
しかし、あんまり大きな休憩もせずに、
僕らは良いペースで登って戸渡尾根に!!
分岐は徳ちゃん新道を使う。
途中はすごく緩くなって歩きやすい。
しかし、900mも降りるので長かった。
最も、退屈な時間となりがちな、
下山タイムへの向き合い方が、
これからの時代のトレンドとなりそうです。
ログ
⑬チーズの穴
さて、今回は無事に下山できたが、
僕らは滝屋としては、痛恨のハイライト40m大滝の見逃しという事態に陥った。
この事案をチーズの穴理論を元に振り返りたい。
楽しい活動であるのは事実だったのだが、行けて行くべき水量豊富な時に、準備不足で行けなかったというのは、【おどじさん】とみなされかねない。
ひいては、そういう準備不足は、大滝か見れないという可愛い結果に留まらず、遭難や事故にも繋がる可能性がある。
チーズの穴理論では、結果として事故やミスが起きるのは、一つのファクターではなく、いくつものファクターが全て機能せず、突破されてしまった時に起きるという考え方をする。
今回で言えば、
•オフラインで写真が見れないのは今回だけでなく、何回か続いてた。そこには原因があったが、深く原因を追及せず、放置していた。原因とはiphoneのフォトの自動圧縮機能。最近のオフラインYOUTUBE学習習慣によって自然とiPhoneの容量が圧迫。結果として放置癖が響いた。
•あっきーさんのスマホが水没して、遡行図が見えなくなった。スマホの防水機能・対策に欠陥があった可能性がある。
•サモハンさんは、当日朝までヌク沢に行くものだと思っていた。当然遡行図の用意は不可能。情報伝達に問題があった可能性がある。
•東京120遡行図では僕らが二俣と判断した部位への記載が薄く、他は大変役立ったが、大滝の場所特定においては、分かりにくいものであった。その遡行図1種類のみを使用してしまった。
•紙の遡行図を用意しなかった。
•そもそも事前リサーチ不足だった。大滝の位置を地形図上にプロットしておくべきだった(?)
•天気予報がめくるめく変わって、リサーチの時間がなかった。リサーチ不足の場所を選んでしまった。
などと無数に要因が挙げられる。
しかし、この中の1個でも状況が変われば、
見れてたでしょう。
最高で悔いのない活動にするために、頑張っていきたいです。
⑭まとめ
POINT
① 水量多い鶏冠谷を満喫。深い樹林帯とナメ滝に抱かれる沢体験。おすすめの2級沢登り。
② ものすごい滝の数。そしてその平均レベルは高い。
③ チーズの穴を1つでも塞ごう。
距離:14.1km / 累計標高差:3050m