釜川三ツ釜とヤド沢の滝
【新潟県 十日町市 小出】
滝の記録
訪問日 2019年7月27日
活動の形態:3級沢登り/上級滝めぐり (5人) / 車
装備:8mm×30m(1), 8mm×40m(1), 撮影機材, ドローン, 沢タビ
感動度:かなり~限りなく(25m滝)
①渓谷と見立てる
人の人生を渓谷と見てみたとき、
ゴーロもあれば、ゴルジュもあり、
樹林帯もあれば、連瀑帯もある。
時に堰堤の建造、
並走する林道開発、
ゴミが捨てられることもあるかもしれない。
その自分の人生という名の渓谷を、
どう彩り、どう美しく、
豊かな理想の世界にしていくのか。
そうやって考えてみると、
「1つの滝活動」というのは、
参加者のそれぞれの人生が「滝」となって、
パノラマ滝を形成する、
その場とも見ることができる。
今回もまた、
豊かな人生渓谷をお持ちの皆さんと、
唯一無二の滝空間を作りたいと願い、
新潟へと向かった。
②好転した空
僕は2年前の黄蓮谷への代替案の時から、
計画に加わっていて、
皆さんの三ツ釜への憧れは、
それよりもずっと前からのことだと言う。
なかなか天気と折り合いが合わなかったヤド沢に、
今年は行けそうだと胸を踊らせる。
けれど、
集合場所の道路ステーションでは、
豪雨に降られ、暗雲がたちこめてしまう。
しかしヤド沢は大丈夫だと信じて、
「ぶーーん」っと西へ。
駐車スペースでは、
快晴が広がっていた!
③川に馴染む
沢へは、背丈の高い、
草々の中に踏み込まれた道を辿って、
数分で降りる。
僕らより先に進んだパーティは2組。
巨岩帯では沢に体を慣らしていく。
やがて淵が現れた際は、
右からも巻くことができるが、
あえて泳いで通過。
見た目ほど難しくはない。
この河川は釜川。
二俣として、左右に分かれて、
右に進むと、一気に内容が濃くなっていく。
④右俣で水と遊ぶ
4mの複瀑。
複瀑の「複」は複雑の「複」で、
僕が複雑な流れの滝を簡易的に
表現するために用いている。
左の壁に取り付いて、
引き剥がされないように粘って、
スタンスを置き換えて斜上。(III+)
ただ、誰もがフリーで来れる
ルートではなかったことと、
登った上がまた微妙な感じだったので、
皆さんは左岸の
残置ロープがあるところから、
通過してきた。
このあたり、今度はもう少し、
チーム全体が動きやすいルートを
見極めていきたい。
3m滝
5mCS滝は高巻き
やがて淵が現れて、
この狭くて深いトイ状小滝の先に、
3m滝が座っている。
ここは僕だけ左のリッジ(岩)を登攀。
(III)
出だしが少し細かいが、
ここは気持ち面によって、
取り付けるかどうかが肝心。
巻きは右岸。
その直後、川は屈曲し、
5m滝が深い淵を形成している。
ここはあっきーさんを先頭に、
泳ぎの後、左の階段状壁を突破。
河原
ここは長ーい淵になっていて、
BALさんを先頭に進んでいく。
とても綺麗で美しいところ。
緑の谷
⑤渓相の変化
この先、沢が狭くなり、
つっぱりムーブ主体で上流へ切り抜けていく。
僕はほぼほぼヘツリだけで通した。
(BALさんご提供)
3m滝にへばりつく。
(撮影用…笑)
(BALさんご提供)
大きな岩がお邪魔な箇所は、
岩の左側を選択。
途中ザックが引っかかってしまったが、
BALさんがヌメヌメスラブを
慎重に通過してくれて、
僕はザックを引き上げてもらい、
空身で下から通過。
いよいよという感じ。
⑥チャージ系 三ツ釜
滝近くで、
カメラの水滴を飛ばすシュポシュポを、
川に落としてしまったが、
下流部でアンさんがナイスキャッチしてくれて、
事なきを得る。
滝前では大きく手を広げたり、
閉じたりして、何かを感じようと試みる。
大自然の壮大な空気からは、
チャージと浄化の両側面があるが、
この滝は「チャージより」な感じがした。
⑦登って上段
はてさて、
左岸の突き出た箇所を登っていくが、
終盤から傾斜が急になり、
「およよ?」
と、自分のスピードが
遅くなっていることに気づく。
剥がれかけて動く薄い岩、
足で踏んでいる動くジャリジャリ。
(BALさんご提供)
BALさんは一気に上まで行ってしまって、
なんとか僕もその後をついて登った。
後続の3名には
途中からロープを掴んでいただく。
そうすると上段の滝前!
ワイド!
一瞬の晴れ間をアイフォンで。
この滝は釜川右俣(千倉沢)とヤド沢が、
どちらも滝として合流していて、
一ノ瀬川と竜喰谷もおんなじ関係性。
(滝の規模感は別物)
踏み跡を辿って、
ヤド沢側へ向かった。
下にはまん丸の釜。
BALさんは接近
これまでは、釜川の右俣。
ここからいよいよヤド沢の冒険が始まる。
⑧ヤド沢へようこそ
ヤド沢の1本目は
埴輪型のホットポールが不思議な滝。
ヌメっているが、左から直登する。
2段7mのナメ美瀑。
流れが綺麗
2段15m滝
上部では、青空が見えた。
15mのでっぱりある滝
ヤド沢のメイン滝の一本で、
光り輝く美しい場だった。
ナメの奥に13mスダレ滝。
このあたりは、 普通に巻くことができる。
⑨「どでん」とした滝
核心の25m、
奥まり、のっぺりとした滝!
この滝を筆頭に、
出っ張った滝や、埴輪の滝、
スダレ滝などカメラを出したい滝は多数。
けれど、今回僕らの人数は5名。
目的は、50m大滝。
この奥まり、のっぺりとした25m滝は、
僕にとってはどストライクの滝で、
これだけ近くに来れたのに
撮影できないせつなさ!
滝に向かって左側には、
トトロのようなリッジがあって、
その左には、クラックが水を落としている。
このクラックがルートのようで、
9~10m登った上部から途端に緩く、
問題は下部。
むしろ、途中までトトロリッジを登って、
水が流れるクラックへの横移動が、
できそうな気がしてきた。
⑩縁起
リッジを登っていくと、
一定の高さとなり、微妙なスタンスの中、
ハーケンを打ち込んで、ランニング支点を取る。
そこからさらに上を目指すが、
思っていたよりも悪く、途中で、
上へのルートがついえてしまう。
ここはルート模索をしながら、
左側に逃げるように進路を選んで、
クラックに左足をかけることができた。
(BALさんご提供)
そんな時、BALさんが、
よく覚えてはいないものの、
プラスの声をかけてくれて、
「このルートで行けそうなんだ!」
っていうように強く信じることができた。
参加者の5名はもちろんのこと、
滝いろを見てくれる方々、
滝人Collectionの読者さんや、
あっきーさんのインスタのフォロワーさん、
はんぺんさんやアンさんのお仕事の仲間たち、
関わる方その全ての方々。。。
そういった数えきれない方々に、
小さな何かをもたらすかもしれない一歩。
右足を大きく上げて踏み込み、
なんとかつないでいって、
上部の緩い地帯に繋げた。
上部ではまだ滝を登り切っていないが、
引っ張ったらロープがこなかったので、
もう一杯なのかと判断し、
ハーケンでビレイ支点を構築。
(1枚取り、途中でもう1枚から支点を追加)
実際は、40mロープはまだ余っており、
一部キンクしていたため、
僕が誤って判断してしまった。
(BALさんご提供)
皆さんにはアッセンダーや、
フリクションノットで上がってきていただく。
ここから最後の5m分も
ヌメリがあるナメだったので、
慎重に登ってロープを張った。
こうして5名が難所を通過。
⑪大滝に至る
続くトイ状8m滝と、
3段15m滝は右から巻き越して、
それが終わるとはるかな大滝の姿が。
物語はここに束ねられた。
大滝前の平和度は高く、
くつろげる空間なのは、
今回の目的地にふさわしかった。
遠望した時には、
軽く60mはありそうな規模感で、
そこのところは、
上部がナメなので近づくと、
非常に縮こまって見えてしまっている。
黒光る下部の岩盤が強く印象に残った。
⑫たかまかない
今回は大滝を高巻きせずに、
なんとか手前で林道に出れないか模索。
はんぺんさんが
ドローンを使って、偵察。
この辺りは、沢屋にはできない
僕らならではの、アプローチ。
そうすると、場所によっては、
大滝手前の左岸が這い上がれそうなことが判明。
スラブに阻まれて登れなかった場合は、
野宿が確定してしまうが、
戻って左岸に取り付いていく。
120mほど高度を上げることにはなったが、
著しく険しいパートはなく、
尾根につきあがることができた。
そこから林道へは実は谷状の地形があって、
意外なほど深く、藪も半端ではない。
なので、尾根をゆるく登り続けて、
林道に出てしまうことにした。
林道に入ると途中で完全に日没。
完!!!
⑬その後
今回は手ぬぐいを忘れてしまって、
後頭部を蚊やブヨに大量に刺されて、
ボコボコになるという現象が起きました。
その後、
お風呂ニュー・グリーンピア津南
に入って、帰路へ。
終電がなくなったので、BALさんには
自宅付近まで送っていただいてしまいました。
ヤド沢大滝に行く、
遡行グレードは多くのレポでは3級上。
核心は奥まった、
のっぺり25m滝であり、
この滝の存在が遡行グレードを、
1級分上に押し上げてます。
⑭型と空気
自分の人生を渓谷に見立て、
それを豊かにしようと思ったならば、
必ずしも滝ばかり行っていて
素晴らしい渓谷になるとは限らず、
直結はしないんだけれども、
しかし、行くことで、
どういう渓谷が素晴らしいのかとか、
どういうところに美の法則性があるのかとか、
調和感とか、「正解の型・空気」を、
知ることができます。
今回、皆さんと作れた空間は、
能力と知恵と経験が結集し、
日帰りで大滝の一筆書きが描けた、
広々とした優雅なパノラマ滝でした。